2014年11月24日月曜日

不明部分の物語



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(つい買ってしまった土偶クリアファイル)
先週、国宝展へ行く機会がありました。
今回は私の大好きな土偶さんたちがいらしていると聞き、
人ごみ苦手な私も、気合を入れて訪問しました。
国宝の土偶5人衆がせいぞろいする期間から外れていることを知らずに行ったので、
お二人しか見られませんでしたが、お目当ての合掌土偶さんには会えました。
 今もその用途に謎が多い土偶さんには、さまざまな物語が浮かびます。
創造は勝手にふくらみ、おかしな話から怖い話までいろいろわいてくるのです。
 説明板に「当時のものと思われる修復痕がある」と書かれていました。
彼らは、修理しながら大切にあつかわれていたのですね。
それにしても、ふくよかな女性の体から、かなりスリムなボディスーツ風のスタイルまで、
様々な体系と姿勢です。おまけに、合掌土偶さんは口のまわりにヒゲみたいな点々までありました。
これからも、どこかの土の中からひょっこり現れてくれたら嬉しいです。

 旅行先で偶然見つけた博物館でも、思わぬ不思議なものと出会えるときがあります。
ギリシャの小さな博物館だったとおもいますが、ワイングラスのような器なのに、なぜか口が3つか4つもついているがありました。
「これで飲むとしたらかなり大変だろうな…。同時にすわないとこぼれちゃうし。」
私は顔面にいくつも長い口びるがある妖怪を想像し、説明の英文を電子辞書をひきながら必死に読みましたが、
結局『用途不明器』と書かれていました。わからなくて残念と同時に、わからないほうが楽しいとも思いました。
 物語の種が発芽する、用途・使途不明なものたちが大好きです。





2014年11月12日水曜日

遠い国からのプレゼント



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8月にお会いしたオーストリアの出版社の方から、素敵なプレゼントをいただきました。
「ふわふわいいな/絵・うさ 文・たかぎなまこ」の韓国版が出版され、ハングル文字の絵本が入っていました。
それだけでなく、心のこもったお手紙と、今まで食べたことのないほど美味しいチョコレート、そして上の写真の木の実と、紅い押し葉も同封されていました。

 日本語で「セイヨウトチノキ」フランス語ではマロニエと呼ばれる、
日本の山地で大木をみかける栃の木です。
日本のトチは葉が黄色くなりますが、セイヨウトチは赤くなるのでしょうか。

 栃の実は、かなり手間をかけてあく抜きしないと人間は食べられません。ヨーロッパでは「動物たちが食べる栗」と言われていて、飾りなどにも使われるようです。
 しかし、日本では栃餅・栃の実せんべいなどになっていて、私も過去に何度かいただきました。福島生まれの母は、幼い頃に栃餅がご馳走だったとききました。
 
 その実を贈ってくださった方の気持ちが、実が入った箱の中からあふれ出てきたのを感じました。大切そうに、やわらかな紙にくるまれた押し葉からも。
「夏に私の町を案内した時、美しい大樹を紹介したでしょう?あの樹たちが秋になってこんなつやつやしたきれいな実をつけたのよ。」
贈り主の優しい声が聞こえる気がしました。
 
夏に散歩をご一緒させていただいた、オーストリア・クレムスの丘を思い出し、今はトチの樹の大きな葉がパサっと落ちてくるのを想像しました。
短くなる陽が、あっという間に冬を連れてくるのだろうなと思うと、あの時聞いた教会の鐘の音とともに、静かでせつない気持ちになります。