2012年11月17日土曜日

大好きな丸いもの③



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庭のコキアが赤から茶色に変化しようとしています。
今年は10月がとても忙しく、ゆっくりコキアを眺める時間も
少なかったのですが、いつの間にかきれいに紅葉してくれていました。
コキアは、三年前に茨城県の『ひたち海浜公園』で丘一面にひしめいているのを見てひとめぼれしました↓
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苗を三本だけ買って植えてから、毎年庭のどこかしらで芽を出してくれます。
でも、ここならきっと育つだろうと予測した場所では思ったより大きく育たず、
意外に大変そうな場所で丸く大きくなったりします。コキアにかぎることではありませんが、その年の気候によって、育ちやすい場所は変わるようです。今年の夏は猛暑と少ない雨だったので、日当たりが良い場所は過酷すぎて、全体的に大きく育ちませんでした。
 

 近所の駐車場の割れ目のちょっとした土に、こちらからコキアのタネが飛び、発芽しました。
(あんなとこに芽が出てしまって、車か人にすぐ踏まれてしまうだろうな…。)
関心が無い人なら、ほとんど気に留めることなく見過ごされる小さな草です。
ところが、『過酷なコキア』は踏まれず、貧弱な土壌では上出来なくらい育ったのです。
 土地の潜在能力と、植物が人の心に贈ってくれる不思議な力のおかげですね。
何も考えず歩くコンクリートに、たった一つ草花が息づくだけで、踏み下ろす足に優しさが宿るのかもしれません。
 大好きな愛読書「みどりのゆび」が頭に浮かびました。
主人公のチトは、あらゆる隙間に眠っている種子を目覚めさせ、一晩で開花させる能力を持っていました。
一晩でびっくりするほど育たなくても、植物はすさんだ心の人間に少しずつ優しさをわけてくれるようでした。





2012年11月3日土曜日

震災で消えた小さな命展…17



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10月22日まで山形県で展示されたのが東北では最後の展示になり、
現在、愛知県西尾市展示されています。
これからは、全国各地を巡っていくのですね。
被災されていない方たちの心にも、小さな命の声が届きますように。


 小さな命の声と書いて、久しぶりに思い出した作家がありました。
山形県高畠町出身の浜田広介という児童文学者。
「泣いた赤鬼」や「りゅうの目の涙」などが有名ですが、
その他にもたくさんの作品があるのをご存知でしょうか。
私が好きな作品は「みそさざい」「ある島のきつね」「花びらの旅」などです。


 児童文学の歴史において、浜田広介という人は
「子どもが退屈するものであり、子どものための文学ではない、
前時代のものだ。日本のアンデルセンなどと呼ばれるが、
アンデルセンになどとうてい及ばない。」
と酷評されることもあるそうです。

 
 確かに、子どもが面白いと思うというよりも、読んで聞かせる
大人が心にじんわりくる作品が多いのかも知れません。
でも、大人が読んで心にじんわりきたものは、子どもにも伝わるのでは
ないでしょうか。
 

 目に見えないほどかすかな存在や、歩いていると見過ごしてしまう
微小な命たちが、浜田広介のお話の中では暖かで優しい存在感を
そっと見せてくれるのです。
 ドラマチックではないけれど、ひっそりしたそのストーリーは、
子どもの頃に読んでもらってすぐに忘れたとしても、数十年経った
大人になって突然思い出すかもしれません。
「あれ、あの話、一体誰だったかな?」
「なんだかほっとした気がするけど、終わりはどうなったっけ?」
そんなふうに、物語のタネは数十年後に発芽するかもしれません。