2013年3月3日日曜日

うすあかるい国



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(イナリ湖のオーロラ Itoi氏撮影)

 ひな祭の今日、いたましいニュースが報じられていました。
昨日北日本に吹き荒れた猛吹雪が起こした事故…吹雪で車が立ち往生したことが
原因で、ほとんど方が自宅からすぐ近い場所で凍死されたそうです。
 幾人もの命が亡くなった中で、吹雪の中をお子さんをかばうように
抱きかかえたまま、命を落としたお父さんのニュースに胸が痛みました。
お子さんは助かったと聞きました。


 宮沢賢治の『ひかりの素足』を思い出しました。
あの話は、童話よりも宗教的な法話に近い要素が含まれていると言われますが、
無宗教の私にとっても、一度読んだら忘れられない話の一つでした。
 2人の幼い兄弟が、急激に悪化した天候の猛吹雪に巻き込まれ、
兄は弟を抱きかかえたまま、弟だけ命を落としてしまう悲しい話です。 
 
 けれど、ただ悲しいだけではない話です。
兄弟がこの世とあの世の合間をさまようその時間が心につきささります。
うすあかるい国(地獄のようなこの世とあの世の境目)から、
白く輝く国(天国)の入り口へ弟を見送る兄の気持ちはどんなもの
だったのか、初めて読んだ幼い頃の私は悲しさより恐怖を感じたのを
憶えています。
 現実の世界へ帰った兄が、旅立った亡き弟の安らかな顔を見て物語は終わりますが、
やりきれない気持ちより、しんとした静けさが心に訪れるのでした。


 昨夜の猛吹雪で命を落としてしまった方が、どうか安らかに
白く輝く国へたどり着けますように…。
お子さんをかばって自分だけ旅立ってしまったお父さんが、
うすあかるい国でお子さんと心を通わせたことを祈ります。




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