2022年3月11日金曜日

霧が溶けた海

  

 霧の濃い朝、4キロほど離れた海岸へ行ってきました。太陽が昇っているはずの6時半。海までの道は黒く湿っていて、バックミラーの中で、来た道は霧に埋まっていました。信号の赤色が、立ち込める霧にじんわりにじんで、青に変わった時も紅が残っていそうでした。

 海へ着き、波打ち際へ歩いていくと、どっしり海面を埋めている霧の中空に、太陽がぼんやり現れました。真上に青空が一瞬光って、海はなんとも言えない不思議なミルク色で沈んでいます。あまりに美しくて、私はしばらくぼおっとその景色を観ていました。

 けれど、もし、私の大切な存在が、海に命を飲み込まれてしまったとしたら、こんなふうに霧が溶けた海をきれいだと思えるのだろうか、と考えました。海に、大切なものたちを連れ去られたら、こんなふうにのんきに霧の海を観に来るのだろうか、と思いました。

 自分がそうなっていないので、答えはわかりません。自分の身に今はたまたま降りかかっていないことですが、いつそうなるかはわかりません。

 災害によって突如急変する海。今日、3月11日だけでなく、心にいつも置いておきたいと思います。

追記: この日、海岸で想った物語を小説投稿サイトへあげさせていただきました。

https://novel.daysneo.com/sp/works/7a537026fb53483a3ad7ca774181e910.html

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