2013年12月2日月曜日

においの記憶



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(嵐の後の九十九里浜)
突如、ある匂いによって遠い思い出に引き戻されることがあります。
この香だとあの風景を思い出す、とわかっているものもあるのですが、
一体自分は何故この香に反応し、遠い記憶を思い出したのかな?
と不可解な時もあります。
 
 南風が強かった数日前、その不思議な匂いに会いました。
花か草木の匂い?が、なまあたたかい強風の空中を断片的に飛んできました。
匂いによって引き戻されたのは5歳頃、近所の家の庭で遊んでいた風景。
その家は庭が広く、木がたくさんしげっていたので、家屋自体はあまり見えません。
 立派な門の横に幹の太い巨木が生え、木を囲むように低い塀をめぐらせた
小さな広場がありました。木のそばに椅子が置いてあり、5歳の私は近所の友達と一緒に主のおばあさんとお話していました。
おばあさんは、幼い私たちに、美味しいお菓子と面白い話をプレゼントしてくれたのですが、残念ながらどんな内容だったか憶えていません。
 はっきり憶えているのは、おばあさんの白髪が銀色に輝いていたこと。
そして、巨木に洞があったこと。私の身長では首をそらしてやっと見えた穴。
「あの中には何があるのかな?」
それを見上げるとなんともいえないワクワクをかんじました。

 
 5歳の時に居たその町から、私はたくさんの引越しをしているので、おばあさんとも近所の友人とも音信不通になりました。何年か後、大好きな童話『長靴下のピッピ』を愛読した時、その庭先の洞のある木を思い出しました。ピッピの庭にある「レモネードが成る木」が思い出させてくれたのです。それから今までずいぶん長い間、この記憶はホコリをかぶったままでした。

 
 そんな思い出へ引き戻した匂いは、あの巨木の葉か幹か花の匂いだったのかもしれません。
「あの木は、何ていう名の木だったのかな?」
母に当時のことを聞くと、おばあさんのご主人が病気で寝込んでいたこと、子ども好きで私や友人をしょっ中招いてくれていたことは憶えていましたが、あの木の名前はわかりませんでした。
 台風なみの低気圧が暴れまわった先日、大気中には、遠い場所から運ばれた匂いが撹拌されていたので、普段は香らない匂いもちぎれ飛んできたのでしょうね。
その正体がつかめず残念です。




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